2006年11月号

 

人生において

嬉しいことも悲しいことも
永遠に続くものはないから
こだわるなという
賢者の言葉があるが

今、この瞬間
嬉しいものは嬉しい、
悲しいものは悲しいと
全身で感じる生もまた
生きている人間に対する
創造主の祝福であるはずだが…

深まる秋の夜
菊花茶一杯に
私の心を動かす 一冊の本があるから

文:ユン・スンヨン 翻訳:片岡啓子

 

 


写真:http://www.obusuma.com/男衾村 - 復興計画

 

紅葉の「美」を見つめながら

山々に紅葉の波打つような美しさが満ち溢れる。紅葉は気候が変わるにつれ、葉の色が緑から褐色、または黄色に変化していく現象を言う。

韓国の紅葉はその美しさが世界中に知られている。秋口から徐々に気温が下がる年は、非常に紅葉が美しい年になると言う。秋になる頃気温が急激に下がる年は紅葉の色合いが今ひとつで、紅葉が色づく前に枯葉となって落ちてしまうと言う。

紅葉はゆっくりと移り行く気温の変化に調和しながら最高の美を表わす。我々の人生も同様に、変化と調和によって美しくなれる。生きていく上で、速度と調節が必要であり重要でもある。人生における速度と調節の標準は原理である。全てのものは存在のための法則と原理がある。その法則と原理から外れると、それが存在する目的を見失ってしまう。

我々の人生自体もそうである。飛行機と船は定められた航路に従っていくとき目的地に着き、車は道路上で定められた交通ルールに従って走るとき、安全に目的地に到着する。人生の過程ひとつひとつに全力を尽くして、誠実に取り組んでいかなければならない。原理は過程ひとつひとつに適用されるからであり、その過程ひとつひとつにやりがいがあり、幸福があり、美しさがあるからだ。果実はその過程を経た結果として自然に実るものだ。従って、その過程、すなわち人生の一瞬一瞬を軽く見たり、怠ったりしてまとまりのない人生は、空想と虚栄を映し出した影となる。そこには美しさの代わりに虚無感と失敗が待っている。

人には行くべき道と守るべき道がある。人生においても原理というものがあるのではないだろうか。行くべき道は澄んだ目で正しく見つめ、守るべき道は真実なる心を通してしっかりと見つめなければならない。

また真実なる人生の道は遠くにあるのではなく、我々自身とごく近くの隣人と共にある。相手を思いやる人生、即ちまっすぐな姿勢と清く美しい心を持つならば、人種や民族、皮膚の色や宗教を超えて、地球星のいたるところに、美しい紅葉が色づくのではないだろうか。

特集
五官で味わう読書のすすめ

物語の息吹を感じて…。


すっかり秋も深まってまいりました。読書をするには最適のシーズン。皆さんは読書がお好きですか?この秋、純粋な気持ちを呼び起こしてくれる絵本や児童書に出会ってみるのはいかがでしょうか。子どもの本には「人間の心身の育成」に重要な鍵があると言われています。

児童文学研究者の方と、近頃話題になっている「読み聞かせ教育」のプロの方に子どもの本の魅力についてお話を伺ってきました。

 

<宮沢賢治に魅せられて児童文学の世界へ>

●児童文学研究者:松田司郎教授

<プロフィール>
1942年大阪生まれ。同志社大学卒業後、出版社に勤務。退社後フリーライターを経て、現在、大阪国際大学人間科学部心理コミュニケーション学科教授。宮沢賢治研究者としても精力的に活動。著書は研究書、児童書など多数。宮沢賢治の故郷岩手県を題材にした写真集も出版。

 

1.児童文学に目覚めたきっかけは?


岩手県の民話を基にしたお話

18歳のときに宮沢賢治の「鹿踊りのはじまり(*)」を読んで、身を震わせるような感動を覚えました。このような作品をいつか書けるようになりたいと思ったのと同時に、童話の世界があることを知り、ファンタジー作品を読むようになりました。作家になりたかったのですが、宮沢賢治のような作品を作る手伝いをしたいと思い、出版社に入社しました。

* 「鹿踊りのはじまり」のあらすじ(「MARC」データベースより):
湯治に出かける途中のすすきの原でうっかり落としていった手拭いに、6匹の鹿が寄ってきて、恐る恐る近づいたり、あわてふためいてとびのいたり、やがて鹿たちは…。岩手・花巻周辺に伝わる「鹿踊り」の民話風童話。



2.これまで編集された中で代表的な作品は?

出版社在籍中の20年間に世に送り出した絵本は全部で100冊以上に上ります。そのうちの10作ほどが現在でもロングセラーとして読み継がれています。灰谷健次郎さんの『ろくべえまってろよ』や、谷川俊太郎さんの『もこもこもこ』などです。

国語の教科書にも採用の
名作

30年以上子どもたちに
愛されています


 

 

 

 

 


3.絵本編集にまつわるエピソードをお聞かせください。

『ろくべえまってろよ』は当初、「絵が暗い」とか「マンガチック」だとか、絶対に売れないと言われたんですよね。穴の中に落ちた子犬を子どもたちが助けようとする話ですが、暗い色で穴ばっかりの絵本のどこが売れるんだ、と。ところが、現在でも年間2万部売れ続けています。子どもが面白がったり、感動する本には大人の認識とのギャップがあると思いました。


4.大人と子どもの「本に対するギャップ」とは何ですか?

残念なのは大多数の大人たちが「子どもの本は子どものもので、大人のものではない」という誤解があるんです。さらに「いい本」というのは教育上好ましいもののこと。教育上、いいか悪いか。そんな「コード」がかかっているのでしょうね。まずは、大人自身が子どもの本に感動したり面白がったりする気持ちが必要なのではないでしょうか。


5.子どもの本や物語の魅力とは?

物事の本質をドラマとしてシンプルに伝えてくれることです。最近、青少年が事件を起こすことが多いですよね。これは「身体感覚」が欠如してきているからなんです。「身体感覚」とは大自然の中にいると、なぜか喜びを感じて幸せな気持ちになることであり、宇宙と自分との関係をわかっていることでしょうか。最近は何でも便利になってきて、自然や宇宙を図式や記号で覚えこんでしまって、皮膚感覚がなくなっているのは、とても怖いことです。けれど、本を読むことで「身体感覚」を少しでも呼び覚ますことができます。


6.読み聞かせ教育のよさとは何ですか?

声に出して読むと体に音が響きますね。そうすると体を通して物語を感じることができます。黙読は文字を記号化してしまうため、どうしても意味や記号でしか感動が感じられません。読み聞かせをすることで親子のコミュニケーションをとりながら自然や宇宙との対話の方法を学ぶことができます。


7.子どもの本が大人の間で流行っている現象をどのように思いますか?

忘れていたものが呼び覚まされて、「夢」をみさせてもらえる。それは逃避ではなく、懐かしい故郷や自分自身に回帰することだと思います。

本の良さは、テレビやラジオのようにおしつけがましくなく、いつでも自分の読みたい好きなところに行けること。自由に解釈できることですね。


8.先生から見た宮沢賢治とはどんな作家ですか?

自然との交流を基にして作品を作った作家でしょうか。自然は天の声と置き換えることもできますね。人間が本質的に持っている根が宇宙とつながっていることを実証してくれたとも言えます。


9.宮沢賢治の作品の魅力とは?

擬態語の音感やリズムが人間の自然な語りに合っていて、読みながら映像までも呼び込むところでしょうか。自然の偉大さを作品に反映している点も魅力のひとつです。

 

宮沢賢治

(c)宮沢家所蔵(1896-1933)
岩手県花巻市出身。仏教徒の家庭に生まれ、農業学校の教師をしながら、数多くの詩や童話を創作。代表作に「銀河鉄道の夜」や、「注文の多い料理店」、心象スケッチと呼ばれる詩作には「春と修羅」「雨ニモ負ケズ」などがある。

韓国でもひそかに
人気


未完成の名作

 

 

 

 


<子どもの感性の扉を開いて>

●読み聞かせのプロ、粟嶋紀子さん

<プロフィール>
京都精華大学在学中の1999年より読み聞かせボランティアを開始。現在は大阪にある「ボディートーク協会」にて子どもミュージカルの指導のかたわら、プロの表現者としての活動も展開中。11月にはハープとのコラボレーションでの朗読ライブも予定。


1.読み聞かせを始めたきっかけは?

大学在学中に地元の小学校の誘いを受けて、もともと読み聞かせボランティアをしていた母と一緒に始めました。

休み時間を利用して図書室で有志の保護者たちと一緒に活動したり、また「物語朗読クラブ」という放課後のクラブ活動で指導をしていました。約3年ほど続きました。図書室の読み聞かせの対象は、主に小学校の低学年でしたが本のテーマによっては高学年の子どもたちも見に来ていました。


2.読み聞かせをする上で大切なことがあれば教えてください

最近図書館では、読み聞かせボランティアの育成もしているところが増えたようですが、読み方やアクセントの指導に重きを置いていると聞きました。確かに技術的なことも必要ですが、生きた言葉の奥には、生きた息(声)があります。嬉しいときには嬉しい息(声)で表現することが大切です。子どもたちの感性を磨くためには、まずは大人が子どもの本に感動して、その上で感動を伝える力が必要です。


小学校で読み聞かせをする粟嶋さん


3.読み聞かせを通して子どもたちに変化がありましたか?

『モチモチの木』という作品を読み聞かせしようとしたら子どもたちが「面白くないから嫌だ」と言うのです。国語の授業で習ってぜんぜん面白くなかった、と。おそらく「勉強」という形で取り上げてしまったからでしょうね。それで、物語の面白み自体が子どもたちに伝わってなかったのかもしれません。

いざ、臨場感あふれる読み聞かせをしたら、主人公と一緒にハラハラドキドキしながら「こんなに面白い話だったんだ」と子どもたちの反応がとても良くて、物語のよさを再認識したようです。


4.やり甲斐を感じる瞬間はどんなときですか?

子どもたちの感性が開かれる瞬間に立ち会えることです。たった一分でも30秒の詩であったとしても実感が体験になっていくんです。

私事ですが、幼少期は母がたくさんの本を読み聞かせしてくれました。「物語の経験」を積むことで生きる知恵や魂の成長につながったと思います。

 

読書だけではない親子の 貴重な
コミュニケーションの場

<粟嶋さんに聞く― 家庭でのコツ>

-ぬくもりと安心感の中で大冒険を-

本を通してふれあいをもてることが読み聞かせの魅力ですね。親の膝に子どもが座って、互いのぬくもりを感じながら、情感たっぷりに読んであげてください。親の温かさを得られるからこそ、スリルを感じるような内容でも、安心して物語の中に入っていき、冒険ができるのです。

 

 

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